麹菌が大好きな私は、地方へ行く度に暇を見つけてはスーパーへ駆け込みその土地の米麹とどぶろくを買う。 周辺に酒蔵があると、なお嬉しい。 酒蔵の資料館には酒屋唄の歌詞が残っていたりするから。
酒屋唄とは、酒蔵の機械化が進む以前に手作業で酒を仕込んでいた時代に、仕込み作業中に唄われていた唄のこと。 踏桶に入った若者が米を研ぎながら唄を何回唄ったかで作業時間を計ったり、 寒空の下での作業中に、離れた場所にいる親方にサボっていないことをアピールするために唄っていたそうだ。 その土地の風土や酒の味を織り込んだ唄は、酒の味の特徴を書いた能書き以上に酒の性格を表していると思う。 その歌詞を読みながら、きんと冷えた凍えそうな夜に作業をしていたかつての蔵人に想いを馳せていると、 こんなに多くの人の知恵や労力を費やし遥か昔から連綿と受け継がれてきたお酒って、 なんて素晴らしい飲み物なのだ!! と胸がいっぱいになるとともに生唾が口を満たしお腹が空き始める。 その空腹をなだめながら私は、さらに良い酒飲みになれるよう肝機能を高める決意を新たにする。
どぶろくの瓶の中に立ち上るオーロラを胃の中に収めると、身体の中に宇宙が広がる。 持ち帰った麹で作った甘酒が全身に静かに広がったとき、 私はその土地で受け継がれてきた土地の記憶のかけらを取り入れたような心地になる。 旅先で感じたものが自身の内面と呼応したとき、人は自分の心の中にも深い旅ができるのかもしれない。
ラ・フォル・ジュルネの今年のテーマは「UN MONDE NOUVEAU 新しい世界へ」。 今回私は5/3の13時から、丸ビル1Fマルキューブにてチェロとピアノのデュオを演奏する。 選んだ楽曲は、どれも旅とともに生きた作曲家による作品だ。 作曲家は旅先で出会った風景を、自身の作品の中に織り込んで私達の前にしめす。 私達はその曲を受け取りどのような旅に出るのだろう。
詳細はこちら
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018 丸の内エリアコンサート
成田 七海(チェロ) 林 そよか(ピアノ)
日程:5月3日(木)
時間:13:00〜13:30
出演:成田七海(チェロ)、林そよか(ピアノ)
会場:丸ビル1階 マルキューブ
料金:観覧無料
曲目:ブリテン「夏の名残のバラ」/ラヴェル「ハバネラ形式の小品」/ドヴォルザーク「森の静けさ」ほか
詳細: http://www.marunouchi.com/pdf/lfj2018area.pdf
Comments